世田谷区×世田谷こども守る会 第三回ミーティング

 

2017年8月30日、世田谷区役所にて教育委員会と毎年恒例の意見交換会を行いました。

 

意見交換会 参加者:

●世田谷区教育委員会:志賀教育次長、内田学務課長、我妻学務課学校運営係長、末竹学校健康推進課長、泉区民健康村ふるさと交流課長

●世田谷こども守る会:保護者 6名

 

※2015年夏 第二回ミーティングの様子はこちら

※2014年夏 第一回ミーティングの様子はこちら

 


今回は、7月に開催された6周年記念「川場移動教室 大おはなし会」の議事録を事前にお渡しした上、さらに現状を知っていただくため、現在、悩みを抱えている保護者3名に同席してもらい、生の声を直接お伝えしました。発言内容は以下の通りです:

 

★★★

 

【守る会】

本日は3人の保護者の声を聞いていただきたい。

【保護者①】

区内のT小に子どもがいる。震災以降、放射能の勉強をし、とても怖いものと考えている。息子には、放射能の危険性も話している。川場村にはホットスポットがあるため移動教室には参加させたくはなかったが、5年生という思春期の入口に立つ息子に、親の思いで「行かないで」とは言い辛かった。
校長先生と面談をした。面談の印象は被曝を避ける行程を考えているなど誠意があるように思え、行かせることにした。しかし、学校から全世帯向けに川場村についての情報提供はなかった。校長先生からは、全世帯には言わない、心配だと申し出た家庭に個別に対応すると言われた。不誠実だと思う。
移動教室中、子どもたちの様子が学校のブログにアップされていたが、被曝体験だらけの内容にびっくり。喜ぶ保護者もいたが、実はホットスポットなんだよと伝えたら驚いていた。その家庭では、非常に気をつけて放射能対策をしているが、学校では人の目を気にしたり、学校ともめたくないと思って本音を表に出さず、相談をしていない。
このような、「家では対策をしている家庭」に対して、川場がホットスポットであることを伝えないのは不誠実ではないか?普段、家で気をつけているのに、学校から何の情報もなく、結果、無用な被曝をする。危なくないのか?危ないと思ってないのか?

【保護者②】
別の小学校に通っている。原発事故当時は上の子が幼稚園の年長。翌月から通う小学校で、区議が保護者と放射線量を測定すると聞き、参加した。すると雨どいの下など、ところどころ放射線量が高いところがあり、これが現実だ、と思った。匂いも味もない。見ることもできない。
1年生に入学し、川場は5年生だからまだ実感がわかなかった。川場には大切な友人もいて、毎年行くのが楽しみだったが、震災以降、行けていない。
そして昨年、娘は5年生に。周囲に川場の放射能の話をする人はいない。家庭で対策をしている人も知らない。
川場の件で、校長先生や担任の先生と面談をした。これで対策をしてくれるのでは、と一瞬安心したが、話を聞いてくれただけだった。線量などが記されたプリントが配られて、飛行機での放射線被ばくとの比較や、世田谷区が安全だと言っているので大丈夫だ、など説明された。「そういう話じゃないんだけれどな・・・」と思った。
クラスの行事なので、娘一人だけ行かせないということはできない。行かなきゃいけないのか…。結局、行った。山登り、りんごジュース、心配ならやめることもできたが、学校は当たり前に実施するんだと、もやもや感が残る。子どもにも親が心配しているのが伝わっている。
今年は日光にも行った。行かないで、とは言えない。次、下の子がいる。
先生方には状況をきちんと勉強してほしいし、親に説明をしてほしい。川場も給食もオープンに学校と話し合いたい。「川場はこういう状況です。学校ではこう対策します。それを踏まえたうえでどうされますか?」という対応があってもいいのでは?川場で起きていることをきちんと整理立てて、説明会できちんと先生からしてもらいたい。もやもやのまま今まで来た。

【保護者③】
311以降、放射能を気にかけてきた。上の子が入学するに当たり、給食対策をどうするか、また現状どうしているのかを先輩お母さんに教わった。入学前に川場のことは知らなかったが、そのことも先輩お母さんから聞くことができた。5年生になる前に、この問題はどうなるのかなぁ、と思っていた。
周りには関心のあるお母さんが多かった。しかし、川場移動教室に行くか行かないかについては、色々な考えがある。
家の中で放射能対策をしているけれど、川場移動教室の問題は学校に相談せず、または家庭内で夫にも話さずにいる人もいる。母だけ抱え込んでいるケースがある。
「放射能、気にしています」と表明できない風潮が母を苦しめる。
学校は、川場移動教室についてはだいぶ配慮してくれていた。7月の保護者会では今年新しくいらした校長先生が放射能について全員を前に説明してくれた。今までの校長先生は「個別対応」だったので、とても前進した印象だった。
放射能について知識のない先生に引率されると、子どもの被曝は防ぎようがない。今回きちんと説明をしてくれたことで、気持ちよく子どもを行かせる決断ができた。

【守る会】
校長先生方が思っていられる以上に、放射能を意識して不安に思っている家庭は多い。日常、気をつけている家庭も、川場村のことまで知らない人も。後から知ることより、事前に情報を出してほしい。学校が触れないでいると、この話はタブーなのかと保護者は思う。聞きたくても聞けない。学校から情報が出れば、相談しながら参加できるようになる。学校も保護者からの信頼を得られる。

【内田学務課帳】
そんなに普通にお母さんたちは校長とは話せないものなのか?

【守る会】

校長と話すということは普通の家庭にとっては勇気のいること。声を上げる人は少数派で、潜在的に何人もいると思ってほしい。実際に、自分では校長と面談はしないが、面談をしたお母さんに、面談内容を教えてほしいと言いに来る人もいる。

【保護者③】
自分もまさか、校長に話をする日が来るとは思ってもみなかった。

【守る会】
普通の保護者は、クレームを言う親だと思われたくない。「授業です」「校長マターです」と言われたら、それ以上、なにも言えない。

【志賀教育次長】
我々でさえ怖いんですから、皆さんはなおさらのことでしょう。

【守る会】

はい?

【志賀教育次長】
我々も校長には強く言えないんですよね。

【守る会】
保護者は、学校に相談したら、それが子どもにどう跳ね返ってくるかを考えてしまう。受験を控えていたりすると、出席日数や調査書を心配する人もいる。保護者は教育委員会が思っている以上に臆病。つまり「保護者から質問が出ないから大丈夫」や「相談がないということは、心配いしてる保護者がいないということだ」というのは、必ずしもそうではないことを知ってほしい。
いじめや不登校、発達障害の問題でもそうだが、「もしかしたら問題が潜んでいるのではないか」と、良い意味での「疑いの目」を持って欲しい。
今日は三人三様のお話だったが、3人が共通して訴えていることは、「学校から情報提供があれば、気持ちよく子どもを送りだせるのに」ということだ。

【保護者③】
うちの学校では、説明会できちんと説明がなされたが、校長先生から、説明会の後、特に他の保護者から問い合わせはなかったと聞いた。説明会できちんと報告したから質問が出なかったのか、臆病になって黙っているのかはわからないが、情報提供による混乱はない。
自分の場合、他のお母さんたちとつながりがあったから現状が把握できた。他の小学校は孤立したお母さんが多いのではないか。いろいろな面で学校から情報が出ればよいとおもう。給食についても、新しい栄養士さんがいらしたら面談をさせてもらっている。

【末竹学校健康推進課帳】
本題とはずれるが、給食の丸ごと検査も引き継いでやることを考えている。産地公表は作業としては各学校の負担になる。しかし、今回のお話を聞かせてもらってやはり各校長には必要なことであると、図っていきたい。

【守る会】
給食の産地表示の開示はどこよりも早く世田谷区がやった。これは大変なインパクトのあることで、とても大切なことなのでぜひ続けてほしい。表に出ていないことを見つけるようにしてほしい。6年たって公表にばらつきが出てきている。トーンダウンしているが引き続きお願いしたい。

【守る会】
誤解していただきたくないのは、私たちは川場村が危険な場所だ、移動教室は中止にせよと訴えているのではない。「上から」の説明がほしい訳でもない。学校が情報を一切出さず、コミュニケーションが成り立たないことを問題にしている。
学校は、川場移動教室についてフラットに話せる場であってほしい。
学校には保護者をもっと信頼してほしいし、こちら側も学校を信頼していきたい。
学校から情報提供がないことには、何も始まらない。

【志賀教育次長】
小豆川先生の勉強会に出席した。沢山の不安に思っているご家庭がいるということでしっかり受け止めて研修を受けてほしいと会の初めに伝えた。ただ、他区から移動してきた新校長には、正直違和感があったと思う。「世田谷はこういうところだから」と話している。小豆川先生には都度アドバイスをもらえることになっている。校長には、危険なところのチェックや情報開示については伝えてある。今回の声を現状として受け止めたい。運営をスムーズにし、子どもたちの豊かな学びにつなげたいと思う。

【守る会】
繰り返しになるが、保護者から目に見えるアクションがなくても、不安に思っている家庭があるということをぜひ校長先生方に知っていただき、その前提で対応してほしい。

【泉区民健康村ふるさと交流課長】
川場移動教室を楽しい経験の思い出として持って帰ってほしい前提で行ってきている。施設の管理、工事など、移動教室の行程に迷惑がかからないよう留意していき、また、皆さんに使っていただきたいと思っている。

                  ★★★

勇気を出してミーティングに参加して下さった3名の保護者の方、ありがとうございました。
この話し合いを受けて、教育委員会から各学校に対してどのような働きかけがあるかを注視しつつ、会として引き続き、皆さんの声を伝えていきます。