世田谷区立小中学校・保育園給食における放射能対策を求める陳情

世田谷区立小中学校・保育園給食における放射能対策を求める陳情


【要旨】

  1. 給食食材の調達は、全国の都道府県による食品の放射能検査結果等を確認し、放射性物質が不検出の食材を優先的に使用することを求めます。
  2.  国や事業者が放射性物質の検査及び公表を行っていない食材などを中心に、速やかに独自の検査体制を整え、放射性物質が不検出のものを優先的に選択することを求めます。
  3.  食材の産地や測定結果などの情報は、子どもや保護者が利用しやすい形で公表することを求めます。

【理由】

 

環境への甚大な影響をもたらした福島第一原発事故。その実態が明らかになるにつれ、世田谷区でも、目に見えぬ放射能への不安が広がっています。中でも懸念されるのが、汚染された食物の摂取から起きる、子どもたちの内部被ばくです。

政府や各都道府県は、暫定規制値を超えた食品の流通を監視するための検査体制を強化させて

はいますが、流通食材の種類と量に比べ、測定に当たる人的・物的設備が不足し、すべての食材を測定することができていないのが実情です(注1)。

 

また、放射線には「この値までなら浴びても危険はない」という「しきい値」が存在せず、微

量であっても、摂取量に比例して健康被害を引き起こす危険性がある、というのが世界的な定説です(注2)。特に細胞分裂が活発な子どもは、放射線による被ばくのリスクが大人よりも高く、国の食品安全委員会でも、今後はこの点を考慮する必要があるとの評価をまとめています(注3)。

 

これらのことから、子どもが毎日口にする給食について、区は国や都道府 県の検査体制を補完し、安全で安心できる給食の提供に最大限努めて頂けますようお願いいたします。(注4)。

 

子どもたちは、学校に対し全幅の信頼を寄せ、日々、生活しています。大人の都合で対策が一

日遅れれば、その一日分、リスクを背負うのは子どもたちのです。「世田谷区子ども条例」で掲げられているように、未来の宝である子どもたちが『すこやかに育つための安全で良好な環境』のためにも(注5)、早急な対応をお願いいたします。

2011 年10 月14 日

世田谷こども守る会

代表 堀 智子

 

世田谷区議会議長 畠山晋一 様

 

 

 

【補足説明】

◆要旨1.と2.について(ここで言う放射性物質とは、いずれも人工放射性物質のことを指す。)

 

(注1) 大塚前厚労副大臣は、7月4日に放送されたNHK スペシャル「シリーズ原発危機・第2回 広がる放射能汚染」の中で、「野菜の放射能検査は(検査体制が追いつかないので)、規制値を超えた野菜の流通を完全に止められてはいない」と、国の検査体制が完全ではないことを認めている。

 

(注2) 「低線量被ばくであっても、線量とがんや白血病などの発生確率は比例する」と考えるのが直線しきい値なしモデル(LNT モデル)。内部被ばくや低線量被ばくを過少評価する計算方式をとる国際放射線防護委員会(ICRP)でさえ、「直線しきい値なし」の立場で勧告を出しており、多くの国がこの勧告に準じている。

 

(注3) 食品安全委員会物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ「評価書(案)食品中に含まれる放射性物質」

http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_risk_radio_230729.pdf

 

(注4) 都内では、自治体が次々と給食食材の検査に乗り出している。市民のための「放

射能測定室」を設け、給食食材の測定を積極的に行っている小金井市に続き、杉並区は23 区で初めてゲルマニウム半導体検出器の購入に踏み切った。給食の食材のうち、米や根菜類については給食当日前にサンプル検査を行い、さらに使用頻度の多い品目を抽出し、1 日3 品目、週12~15 品目の検査を行う予定。

また港区でも、9 月16 日の区議会本会議で杉並区と同様の測定器を購入することを発表した。

一方、新宿区、渋谷区、国立市では、委託による給食食材の検査を実施し、その結果を区のホームページに詳しく掲載している。

 

これら地方自治体による独自検査の動きを受け、文科省は、都道府県が給食食材の放射線量を検査するための機器を購入する際は、費用の2分の1程度を補助する方針を決め、第3次補正予算案に約1億円を計上することを決めた。

こうした中、世田谷区では、消費者庁からの簡易型検査機器の貸与を検討しているとのことではあるが、手続きから審査、配備までには時間がかかることが予想される。これに対して保護者からは、より速やかで確実な検査体制を整えてほしい、との声が上がっている。

 

(注5) 「世田谷区子ども条例」第9条

『区は、子どもの健康を保持し、増進していくとともに、子どもがすこやかに育つための安全で良好な環境をつくっていくよう努めていきます。』

◆要旨3.について

給食における放射能対策の第一歩として、世田谷区は6 月と9 月に牛乳の測定を行い、結果を区のホームページに掲載している。食材の中でも特に牛乳の汚染が心配されるだけに、区が測定に踏み切ったことの意義は大きく、発表当時は区内・区外を問わず、多くの保護者から歓迎の声が上がった。

また9 月から各学校で始まった給食食材の産地情報の掲示も保護者が待ち望んでいた対応の一つであり、大きな前進としてありがたく受け止められている。しかしながら、産地が掲示されるのが給食当日の朝であり、働く保護者や小さい子供を抱える保護者にとっては、毎朝学校に出向き掲示を確認することは大変な負担となっている。区が「丁寧な情報提供」を強調するのであれば、各学校のホームページに掲載するなど、保護者や子どもが情報にアクセスしやすい方法をぜひ考慮して頂きたい。

 

補 足

(平成23年6月17日に提出した要望書に対する補足)

 

平成2376 

NO!放射能「世田谷こども守る会」

setagaya.kodomomamoru@gmail.com

 代表者 瀬田 美樹

世田谷区深沢 菊地ひろこ

世田谷区玉川 堀  智子

世田谷区長 保坂展人殿

 

先に提出した要望書につきまして、補足として以下の事柄を確認・ご検討いただけますようお願い申し上げます。

 

1・ 学校給食について

a)「学校給食」とは、世田谷区内の私立・国公立全ての学校及び幼稚園・保育園にて提供される食べ物や飲み物をさします。

b) 地産地消の強化と世田谷区内農地の土壌調査の実施、または細かな産地指定による仕入れの実現

c) 区独自の検査体制の確立および測定器の購入

d) 牛乳の毎月1回以上の検査の実施

 

. 各学校、保育施設等の代表者間の勉強会の開催

3. 放射線量の高い地域での宿泊行事の見直し

 

 

b) 地産地消の強化、または細かい産地指定による仕入れの実現  

食材仕入れの段階において、a)世田谷産 → b)東京都産 → c)国内産または外国産(中国産を除く)の順に優先していただき、特にb) 東京都産とc)国内産または外国産の食材については、放射性物質の影響のない産地を指定した仕入れをお願いします。同時に、世田谷区内の農地の土壌調査も実施してください。また、北関東にあっても、定期的な検査が行われ、長期に渡り不検出が認められた町村や生産者の農畜産物については、品目ごとに世田谷区公認の産地として指定し、業者に公認リストの中からの仕入れを委託する方法も考えられます。

 

c) 区独自の検査体制の確立

市場に出回る食品の検査体制が追いつかないため、食品の安全性が危惧される状況が続いています。区の給食食材として公認をする為には生産者側での徹底した検査が必須です。また、測定結果の不正や偽装などを牽制するためにも、小金井市に倣った放射能測定室を設置するなど、常に独自の測定が行える環境の整備を早急に進めてください。

 

e) 牛乳について

今日まで、多くの産地で不検出が続いてきた原乳ですが、関東近県の牛乳に放射性物質が含まれ始めるのは、むしろこれからであると考えております。今後、検査結果に変化が見られたときに区や保護者が迅速に対応できるよう、月単位以上での検査の実施をお願いいたします。検査により4Bq/Kg以上の放射性物質が検出された場合には、直ちに産地の変更などの措置がとられますよう、メーカーとの事前の協議をお願いします。尚、4Bq/Kgはドイツ放射線防護協会の推奨する数値を参考にしています。

 

2.       各学校、保育施設等の代表者間の勉強会の開催

放射線がもたらす人体への影響についての見解が諸説あるように、各学校・幼稚園ならびに保育園の代表者の対応もまた格差があります。法律で定められた、一般公衆の線量限度(平常時無用の被ばくを可能な限り減らすことを目的として定められた基準)は、1ミリシーベルト/年 です。 世田谷区の全児童が低線量被ばくという未知の危険に晒されることのないよう、まずは各学校や施設団体の代表者の知識レベルを引き上げるための勉強会または意見交換会の開催を求めます。


 

要望書へ添付する提案書 補足資料

 

 

d) 区独自の検査体制の確立

7月3日放送 NHKスペシャル シリーズ原発危機 第二回「広がる放射能汚染」にて、大塚厚生労働副大臣が、「野菜の放射能検査は、(検査体制が追いつかないので)、規制値を超えた野菜の流通を完全に止められてはいない」と、販売されている野菜の安全性を否定しています。

また、小金井市では、1986年のチェルノブイリ事故をきっかけに、1990年に市が放射能測定器を購入し、市民が中心となった協議会を設立。以来、持ち込まれた食材や給食の食材などの検査が行われています(http://blog.livedoor.jp:80/go_wild/archives/52168981.html をご参照ください)。

 

e) 牛乳について

世田谷区に給食用牛乳を納入している明治乳業に問い合わせたところ、牛乳は栃木、群馬、千葉、北海道産のブレンドで比率は日によって違うとのことでした。

今日まで、多くの産地で不検出が続いてきた原乳ですが、汚染された牧草が一旦刈り取られたり、風雨で放射性物質が洗い流されたりすることにより、各地で「基準値以下」が達成されたことを受けて次々と放牧や牧草給与の自粛が解かれ始めています。また、栃木県の一部地域では、6月15日に採取された牧草から再び基準値を超えるセシウムが検出されており、関東近県の牛乳が「不検出」ではなくなるのは、むしろこれからであると考えております。

チェルノブイリ後の西ベルリン市における牛肉の汚染度の変化(図1)では、一旦は減少傾向を見せた汚染が冬季の後半になって再び増加しました。これは、夏季に刈り、干草として保存されていた汚染牧草を与えざるを得なかった結果であると思われます。

現在の「不検出」の値は酪農家や生産者団体の努力によるものであり、その負担に対する補償は遅々として進んでいないという問題を忘れてはなりません。

 

図1.牛肉の汚染度の変化 (食卓にあがった放射能・高木仁三郎、渡辺美紀子共著 P55より)

     参照リンク http://s.img.ly/4unc

 

2.    各学校、保育施設等の代表者間の意見交換会の開催

 

放射線がもたらす人体への影響についての見解が諸説あるように、各学校・幼稚園ならびに保育園の代表者の対応にもまた格差があります。行政からの指導や原発事故以降に設けられた暫定基準から導かれた安全機軸を支持する代表者もいれば、国や区が管理する施設の代表者という立場の中でも、子ども達の放射能からの危険を最大限回避しようと考えてくださる代表者もあります。問題なのは、前者の立場の中に、保護者に詳しい説明を求められると「私は年寄りだから、放射能のことはよくわからない」などと逃げてしまう学校長がいることです。放射能にトピックを絞った代表者間の意見交換会が行われることにより、全体的な知識レベルおよび意識レベルの引き上げが積極的に行われることを願います。

 

 

. 放射線量の高い地域における宿泊行事の見直しについて


毎年、小学生を対象に宿泊行事が行われる栃木県・日光市、および群馬県・川場村は、周辺地域と比べて放射線量が著しく高く、いずれも「ホットスポット」であると指摘される地域です(注1)。さらに、大規模余震の可能性や、深刻な事態が続く福島第一原発との距離を考えますと、小学生が100人単位で過ごすにはあまりにも危険が多く、安全な学習の場としてはふさわしくないと考え、以下の通り、改善して頂きたくお願い申し上げます。

 

 ①  震災後、林間学校の行き先をいち早く変更した豊島区や練馬区の例に倣い(注2)、当面は日光市・川場村を避け、より安全な地域の選定を行って頂きますようお願い致します。

 

    新たな宿泊先が決まるまでの間は、事前説明会において、保護者に対して日光市・川場村の汚染の実態に関する情報を提供して頂きますようお願い致します。

 

    余震、あるいは福島第一原発の事態が急変した場合には、どのような対策がとられるのか、保護者に対して説明して頂きますようお願い致します。

 

    ②と③を踏まえ、川場村・日光市での宿泊行事を自由参加型とし、各家庭の責任で、参加/不参加を選べるようにして頂きますようお願いいたします。

 

    参加を表明した場合においても、個別の活動への参加/不参加は、各家庭の判断で選べるようにして頂きますようお願いいたします。

 

 

 

a)日光林間学校

世田谷区では毎年、栃木県・日光市で区立小学校6年生を対象にした2泊3日の宿泊行事が行われております。しかし、栃木県が5月19日に行いました測定によりますと、日光市では、放射線量が高い所で0.71μSV/hに達し、深刻な汚染の実態が明らかになっております(注3)。

 また、政府の地震調査委員会は、今後も三陸沖でマグニチュード7を超える大規模余震のおそれがあり、内陸の一部の活断層でも、地震の危険性が高くなっていると警戒を呼び掛けております(注4)。さらに、日光市から140キロ離れた福島第一原発では、事故が収束に向かっている様子はなく、それどころか、大きな余震が発生した場合には危機的な事態になるとさえ言われております。こうした中、保護者の中からは、「学校はなぜ、これほどリスクのある宿泊行事を継続させるのか」「万が一の際、学校はどのようにして子どもたちを一斉に避難させ、放射能や余震から守るのか」、などといった疑問の声が多く上がっております。

 

b) 川場村移動教室

一方、区立小学校5年生は毎年、群馬県川場村で2泊3日の宿泊行事に参加します。しかし、群馬県が5月28日~6月21日の間に行った放射線量測定によりますと、川場村の線量は一部で0.620μSV/hに達し、教育施設における放射線量としては県内最高値となっております(注5)。また、6月9日の調査では、村内の小学校の校庭から土壌1キログラム当たり1270ベクレルの放射性セシウムが検出されるなど、深刻な汚染の実態が明らかになっており(注6)、地元住民の間から不安の声が出始めております(注7)。世田谷区では、学校や区教育委員会から特に説明がないまま、深刻な汚染が広がる地域へ子どもを送り出さなくてはならないことに対して、多くの保護者が不安を募らせております。これに対し、区教育委員会は、「各学校が状況に応じて行程を変更するなど、柔軟で適切な対応をとり」、「安全確保に取り組む」(注8)としていますが、実際に1学期に実施されました移動教室の例では、「雨の中の長時間にわたるハイキング」や「鱒つかみ」、「鱒を焼いて丸ごと食べた」など、内部被ばくのリスクを伴う活動が多く含まれていたことが報告されております。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 【注釈一覧】

 

(注1)     【添付資料】

群馬大学教育学部 早川由紀夫教授 作成「福島第一原発から放された放射線地図」

http://gunma.zamurai.jp/pub/2011/18juneJG.jpg

 

 

(注2)     豊島区では、余震と原発事故による危険が大きいとの判断から、林間学校の行き先を日光から長野県の蓼科に変更した。また練馬区では、津波のリスクを考慮し、臨海学校をすべて中止し、長野県での宿泊行事に変更した。

 

 

(注3)     栃木県HPより 日光市小百小学校数値

http://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/c02/documents/hoshasen_gakko01.pdf

 

 

(注4)     地震調査研究推進本部HP  第227回 地震調査委員会報告書 (6/9)より

http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11jun/index.htm

 

 

(注5)     群馬県HPより 川場村・私立さくら川保育園数値

http://www.pref.gunma.jp/contents/000145635.pdf

 

 

(注6)     群馬県HPより 川場小学校グラウンド数値

http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1000007.html

 

 

(注7)     高い放射線量の測定を受けて、川場村は7月2日に住民説明会を開催した。子どもを持つ保護者からは校庭の表土を除去するなどの措置が求められたが、村教育委員会は、各学校での測定値が国の定める子どもの被爆限度量:3.8μSV/h(←年間20mSVに基づく数値)を大きく下回っていることを理由に、安全性をアピールした。最終的には、「室内に入る時はほこりを払う」「うがいや手洗いの徹底」などが提言された。 川場村役場 総務課より(7/4

 

 

(注8)     世田谷区教育委員会 学務課 学校運営係より (6/14 書面にて)

 

 

 【添付資料】

群馬大学教育学部 早川由紀夫教授 作成「福島第一原発から放された放射線地図」

 

 

 

 

要  望  書

 


平成23617 

NO!放射能「世田谷こども守る会」

setagaya.kodomomamoru@gmail.com

      代表者   瀬田 美樹

世田谷区深沢 菊地ひろこ

世田谷区玉川 堀  智子

 

世田谷区長 保坂展人殿

 


放射能の被曝から子どもたちの健康を守るための方策について

 

 2011311日に発生した福島第一原発事故をきっかけとして、今日、私たちを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。福島第一原発からは、事故の発生と共に大量の放射性物質が放出され、東北・関東地方の水、農畜産物、および海産物の放射能汚染が懸念されています。5月初旬に文部科学省が公開したWSPEEDIの表面沈着量積算予測値に基づいてセシウム137の地表堆積量を推定すると、世田谷区をはじめ東京都内でも最大で7.7万ベクレル/㎡になるとの試算もあります。これらはチェルノブイリ原発事故後の放射線管理区域に匹敵する汚染であり、ベラルーシではこのレベルの汚染地域に暮らしていた人々の中で20年以内にガンや白血病が増加しました。5月には東京三鷹市と、この世田谷区の女性の母乳からもセシウムが検出されています。

 

 原発災害において、原発周辺を除いた区域に最も大きな被害をもたらすものは、空間放射線による外部被曝ではなく、呼吸や飲食物摂取による内部被曝です。また、年齢が若いほど放射能の影響を受けやすく、低線量でも長期間にわたる内部被曝は危険性が高まります。被曝量と疾病との関係については諸説ありますが、重要なことは、放射能に、これ以上なら絶対に安全であるという「しきい値」など存在しないということです。

学校給食について、教育委員会は一貫して「国の出荷体制に基づき、市場に流通している農畜産物は安全」と主張していますが、これは検査を一度も実行していない市町村や、検査対象外とされる品目が存在する以上、実情と合致するものではありません。

 

子供たちの健康と未来を考える時、未知の事象について、我々はより慎重でなくてはなりません。世田谷区が、子どもたちのために全国の自治体のモデルとなるような思い切った政策を打ち出すことを切に願います。

 

先に述べた事柄を踏まえ、以下を強く要望いたします。

  1.  学校給食に含まれる人工放射能を出来うる限りゼロに近づけるために、次のことを実施すること。

(a)    学校給食の放射能対策を専門に担うスタッフを確保し、各栄養士の指導と教育を実施する。

(b)    野菜をはじめとする全ての品目で放射能が「不検出」または相対的に最も放射能汚染度が低い地域の産物を使う。
(c)    海産物(出汁含む)は、東北から紀伊半島沿岸までを避ける。また、水域不明な海産物は決して使用しない。
(d)    牛肉、牛乳(乳製品含む)及び卵は、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉県産を避ける。また、産地偽装には十分に注意する。
(e)    国の暫定基準値に関らず、区、学校、父母の協議で独自に判断する。また、父母が給食の内容についての情報開示を求める時には、常に隠さずに対応する。
 
2.  飲料・食品等の検査体制を大幅に拡充し、未検査品を最大限減らす努力をすること。また、それらを持続的かつ厳格に実施するために保健所の検査機材ならびに人員を十分確保できるよう必要な措置を講じること。

当要望書に対し、世田谷区の文書での回答を求めます。

 

要望書20110701.pdf
PDFファイル 80.4 KB
要望書20110701.txt
テキスト文書 2.6 KB

 

放射能の被曝から子どもたちの命と健康を守るための方策についての補足・参考資料

 

 

 2011311日に発生した福島第一原発事故をきっかけとして、今日、私たちを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。原子力発電に大きく依存した日本経済の構造に疑問を抱き始めた私たちにとって、この度、脱原発の理念を掲げる保坂展人氏が世田谷区長に就任されたことは大変喜ばしいことであり、『No!放射能・世田谷こども守る会』一同、とても心強く思っております。世田谷区が都内他の区に先駆けて独自に放射線量測定器を持ち、区立保育園、幼稚園、小・中学校において随時放射線量の測定が行われれば、放射能の具体的な危険を理解するための大きな手助けとなることでしょう。

 

福島第一原発からは、事故の発生と共に大量の放射性物質が放出され、東北・関東地方の水、農畜産物、および海産物の放射能汚染が懸念されています。5月初旬に文部科学省が公開したWSPEEDIのヨウ素131表面沈着量積算予測値によれば、3月25日までの時点で、福島と茨城の一部で100万ベクレル/㎡以上の超高濃度、その他の関東地域の多くで10万ベクレル/㎡以上の高濃度の汚染が推定されています※1。このデータからセシウム137の地表堆積量を推定すると、世田谷区をはじめ東京とないでも最大で7.7万ベクレル/㎡になるとの試算もあります※2。また、千葉県千葉市においても414日の時点で、5.3万ベクレル/㎡のセシウム137が土壌から検出されています※3。これらはチェルノブイリ原発事故後の放射線管理区域(15キュリー/K)に匹敵する汚染であり、ベラルーシではこのレベルの汚染地域に暮らしていた人々の中で20年以内にガンや白血病が増加しました※4。5月には北関東だけでなく東京三鷹市の女性の母乳からも4.8ベクレル/Kgのセシウム137が検出され※5、さらにヨウ素やセシウム以外にも、群馬県高崎市のCTBT観測所でキセノン、テルル、プロメチウムが※6、グアム、ハワイ、カリフォルニアの米国環境保護局ではウラン、プルトニウム※7がそれぞれ検出されています。

 

 こうした深刻な放射能汚染が事実として広がっているにも拘らず、政府は私たちに必要な情報を示す代わりに根拠もなく「安全」であると言い続けてきました。原発災害で最も大きな被害をもたらすものは、原発周辺地域を除けば、空間放射線による外部被曝ではなく、呼吸や食物によって放射性物質が体内に入り身体の中から細胞組織を破壊される内部被曝です。体内の器官に付着した放射性物質からの被曝量は局部的に非常に大きな物となりますし、体外に排出されずに留まる物質もあります。チェルノブイリ事故後には数千キロ離れたヨーロッパ諸国でも、当時子供だった人たちの中でガン発症率が増加しました。子供が外部・内部合算で年間20ミリシーベルトの被曝をした場合は25人に1人、年間1ミリシーベルトの被曝ですら500人に1人が将来ガン死すると言われており※8、また、年齢が若いほど放射能の影響を受けやすく、低線量でも長期間にわたって内部被曝すれば危険性が高まります※9。被曝量と疾病との関係については諸説ありますが、重要なことは、放射能にこれ以上なら絶対に安全であるという「しきい値」など存在しないということです。国際放射線防護委員会(ICRP)のリスクモデルは、内部被曝や長期低線量被曝の適切な理解に基づくものではないとして欧州放射線リスク委員会(ECRR)などから批判されてきました※10。米国科学アカデミーBEIR委員会がBEIR-VII報告(2005)において、どんな低線量でも被曝量に比例してがん発症率が増加するという結論に至って以来、「しきい値なしモデル」が世界的なコンセンサスです※11。そうしたことからも、原発周辺地域から離れた世田谷区においては、国の法律で定められた年間1ミリシーベルトの値が継続して適用されるのは当然であり、あらゆる政策は、年間被曝1ミリシーベルト以下(外部・内部被曝合わせて)に基づいたものでなくてはなりません。

 

 また、3月17日に厚生労働省が示した食品の暫定基準値は、子どもへの悪影響を極力なくすという観点からすれば十分ではありません。例えば現在、食品の放射性ヨウ素の暫定基準値は2000Bq/Kgとされていますが、コーデックス委員会では放射性要素を含む5種類の放射性核種の合計は100Bq/Kgまでとしており※12、また、セシウムの暫定基準値500Bq/Kgについても、ドイツ放射線防護協会は子ども・青少年には4Bq/Kgを基準とするよう提唱しています※13。米国の水の基準値であるヨウ素0.1Bq/Kg、セシウム7.4Bq/Kg14に対する日本の暫定基準値は、ヨウ素300Bq/Kg、セシウム200Bq/Kgです。このような緩すぎる暫定基準値に従っていれば、飲料水と食品の摂取だけで年間で最大17ミリシーベルトもの被曝になると、厚生労働省も認めています※15

 

学校給食について、教育委員会は一貫して「国の出荷体制に基づき、市場に流通している農畜産物は安全」と主張していますが、これは実情と合致するものではありません。現在、圧倒的な検査機器と人員の不足のため、食品等の検査は十分にできておらず、大多数の品が未検査のまま市場に出回っています※16。更に、根菜・イモ類は検査対象外とされており、11都道府県で146もの市区町村が5月中旬までに検査を一度も実施していないことが明らかになっています※17。飲料・食品の安全を確保するには、まずはしっかりとした検査・管理体制を整える必要があります。また、セシウム137の半減期が30年(微量になるまでには約10倍)であることを考えれば、大規模な検査は一時的なものではなく持続的に行っていくべきでしょう。

 

 

 

参考資料

 

1 www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/05/10/1305799_0325.pdf

2 http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-49.html

3 http://www.jcac.or.jp/lib/senryo_lib/tikuseki.pdf

4 「終わりなき人体汚染:チェルノブイリ原発事故から10年」NHKスペシャル・1996年、「汚された大地で:チェルノブイリ20年後の真実」NHKスペシャル・2006 

5 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1055

6 http://www.cpdnp.jp/pdf/110427Takasaki_report_Apr23.pdf

7 「太平洋を越えたプルトニウムの謎」『サンデー毎日』2011612日号・p19-21

8 小出裕章・京都大学原子炉実験所助教による試算 http://chikyuza.net/n/archives/9063

9 ジャネット・シェルマン博士対談「チェルノブイリ:百万人の犠牲者」より

    http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/

10 http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_chap1_5.pdf

11 米National Academy of Siences HP Nihttp://www.nap.edu/openbook.php?record_id=11340&page=6

12  http://www.codexalimentarius.net/download/standards/17/CXS_193e.pdf

13 http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/blog-post.html

14 http://water.epa.gov/drink/contaminants/basicinformation/radionuclides.cfm

15 http://www.jca.apc.org/mihama/fukushima/mhlw_kosho110328.htm

16 「じわじわ広がる土壌・海水汚染:食品安全検査は機材も人も足りずにお手上げ」『週刊朝日』(2011610日号)

17 http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110520dde041040007000c.html

 

補足資料.pdf
PDFファイル 105.7 KB