世田谷区×世田谷こども守る会 緊急ミーティング!

 2015年8月12日、世田谷区役所にて、川場移動教室の関係部局と世田谷こども守る会との意見交換会が開かれました。これは、2014年9月に実施された「なかのビレジ A棟屋根防水工事」のあり方が、これまでの区による除染努力と逆行し放射能汚染を拡大させるものだとして、6月の世田谷区議会で取り上げられたことを機に急きょ実施されたものです。

【意見交換会 参加者】

・小豆川勝見 東京大学大学院助教

・世田谷区:教育委員会教育次長、学務課長、学校運営係長、学校健康推進課長、区民健康村・  

      ふるさと交流課長、環境保全課長、世田谷保健所副所長、施設営繕課長
・世田谷こども守る会:代表 他7名
・区内5年生保護者1名

岩本教育次長の一声で意見交換会が実現!関係部局と情報共有する貴重な機会となりました。
岩本教育次長の一声で意見交換会が実現!関係部局と情報共有する貴重な機会となりました。
小豆川先生(一番右)も緊急参加!測定の立場から現実的なアドバイスをしていただきました。
小豆川先生(一番右)も緊急参加!測定の立場から現実的なアドバイスをしていただきました。

「なかのビレジA棟屋根防水工事」とは

 2014年9月、世田谷区は、なかのビレジの屋根の防水シート交換のため、建設以来一度も入れ替えたことのない、つまり311由来の放射性物質が蓄積されていると予想される屋根の上の土を除去し、建物前の庭とその先の斜面に撒きました。
 この工法は、子どもたちの安全に配慮するという、これまでの区の説明と矛盾し、しかも川場移動教室実施中に行われたものとあって、区議会で大きく取り上げられました。(世田谷区議会定例会議事録 P.158:6月17日◆三十四番:共産党たかじょう訓子議員の質問と区の答弁) 

 質問に対して区は、工事に当たって事前に土壌の放射能測定を行ない、数値が8000Bq/Kgより低かったことから「特別な処理が必要な数値ではない」と判断し、土を建物前に撒くことを決めたとしています。

 区の測定結果は以下の通り(いずれも群馬県薬剤師会 環境衛生試験センターで測定):

 

A棟測定結果.pdf
PDFファイル 915.7 KB



A棟の屋根の上の土壌:       

Cs134とCs137 合計440Bq/Kg


B棟測定結果.pdf
PDFファイル 907.0 KB



B棟屋根の上の土壌:

Cs134とCs137 合計80Bq/Kg   



C棟測定結果.pdf
PDFファイル 874.3 KB



C棟屋根の上の土壌:
Cs134とCs137 合計261Bq/Kg



 

 区は、工法に問題はなかったものの、区民の安心のため、秋以降の工事については「土壌の処理方法、置き場所、工事内容について、工事を担当する所管課と検討をする」と答弁しました。

 

世田谷こども守る会で B棟屋根上土壌を 独自に測定

 これに対して、世田谷こども守る会では、区が提示した測定値は周辺環境との乖離が大きく再測定が必要だとして、世田谷区の許可を得てB棟屋根の上の土壌を独自に採取。東京大学の小豆川先生に測定を依頼したところ、区の数値とは大きく異なる結果となりました。

 

B棟_再測定.pdf
PDFファイル 648.0 KB



B棟屋根の上の土壌:
Cs134とCs137 合計 3139Bq/Kg



その他の測定結果:
★土壌 および灰
・21世紀の森 笹平峠出口           : 4523 Bq/Kg
・21世紀の森 登山道入り口(0-2cm採取)    :   2129 Bq/Kg
・21世紀の森 車道への避難分岐点(0-2cm採取) :   1637 Bq/Kg

・なかのビレジ上の森(0-2cm採取)        :   1788  Bq/Kg
・21世紀の森 林道富士山迦葉第26カーブ   :   202.6 Bq/Kg
・なかのビレジ軒下(除染済み箇所)(0-2cm採取)  :   115.1 Bq/Kg
・キャンプファイアーの灰                    : 100.3 Bq/Kg

★食品

・ブルーベリー                     : 0.864 Bq/Kg

・味噌                     : ND

・リンゴジュース                : 1.813 Bq/Kg

 

 意見交換会では、これらの数値を元に、9月から実施される残りのB棟とC棟の土壌の処理方法について話し合った他、そもそも「8000Bq/Kg以下であれば特別な処理を必要としない」とする区の判断に対して、8000Bq/Kgは飽くまでも廃棄方法上の基準であり決して安全基準ではないとして見直しをお願いしました。この点について、小豆川先生からは「細菌検査に於いて保健所が採用している10分の1ルール、この場合「800Bq/Kg」を『特別な処理を必要とする基準』とするような、世田谷独自の判断基準を設けてはどうか」との具体的な提案をしていただきました。
 また、教育委員会に対しては、川場村が「汚染状況重点調査地域」であるという大前提に立ち、不安を抱く保護者・児童への配慮と公平な情報提供、校長先生や担任の先生方への適切な研修・情報提供を行っていただくなど、私たちがこれまで主張してきたこと(参照:「望ー世田谷区と川場村の子どもの「被ばくを避ける権利」を求めてー」)を改めてお伝えしました。

 

提出資料①:『「川場移動教室」実施にあたってのお願い』

平成27812

 「川場移動教室」実施にあたってのお願い

  

世田谷区長          保坂 展人殿

世田谷区教育委員会 教育長  堀 恵子殿

 

 世田谷こども守る会

 

「川場移動教室」実施に当たり、世田谷区には、宿泊施設敷地内の除染や空間線量の定点測定、食事のまるごと検査などを実施していただき、大変有難く、感謝申し上げます。

しかしながら、今回のなかのビレジに於ける工事のあり方は、川場村の汚染状況やその測定方法、保護者や児童が抱える不安に対して、残念ながらまだ十分なご理解が得られていないことを示すものと考えます。

教育委員会の皆様とは、これまで度々お話合いの場を設けて頂きましたが、改めて、これまでの議論を踏まえ、今後の移動教室実施に当り以下の点をお願いいたします。

 

①なかのビレジに於ける防水シート工事について

別添の土壌の測定結果を受け、B棟・C棟の屋根の上の土壌を予防原則に則した方法で処理していただくことをお願いいたします。

 

②土壌の測定方法について

専門家の指導の下、区として統一した土壌のⅰ)採取方法、ⅱ)測定方法、ⅲ)評価基準を確立させ、移動教室に関わる全ての部局の方々に共有していただくことをお願いいたします。

 

③「川場移動教室」についての保護者への情報提供について

各学校に於いて、ⅰ)川場村が汚染状況重点調査地域であること、ⅱ)区の方針として、参加不参加は各家庭の判断が委ねられ放射能を理由に欠席する児童は欠席扱いにならないこと、この2つの情報が一部の限られた保護者にしか知らされない現状を見直していただき、全ての保護者に平等にお知らせくださいますよう、教育委員会としての対応をお願いいたします。

 

④川場移動教室に当たっての校長先生方の意識向上

本年度実施された校長会での研修会を継続していただき、校長先生方が十分な知識や意識をもって移動教室を実施されるよう、教育委員会としての継続した取組みをお願いいたします。

 

⑤引率される教員・補助員の意識向上

春と秋、川場村で行われる実踏に於いて、専門家の指導の下、引率される先生方にも測定をしていただき、汚染箇所や対応方法について具体的な知識を身に付けていただくなど、保護者が安心して子どもをお任せできるよう指導をお願いいたします。また、補助員の方々も、十分な知識を身につけて頂くようお願いいたします。

 

⑥関係する部局の皆様との情報共有

 「川場移動教室」に関係する部局の皆様とのミーティングを、今後も春と夏の年2回実施していただき、情報のアップデートと共有を継続して行えるよう、お願いいたします。


提出資料② 川場村の土壌・食材の測定値(東京大学で測定)

B棟_再測定.pdf
PDFファイル 648.0 KB
土壌食材の測定結果.pdf
PDFファイル 125.9 KB

世田谷区の対応:なかのビレジ屋根防水工事について

 以上を受けて、世田谷区は、9月以降の工事について工法を再検討。放射能汚染に配慮し、
以下の対策をとっていただくこととなりました。
   ・土砂移動作業を行う際は、水散布するなど土埃の飛散対策を講じる。
   ・土砂は、なかのビレジ敷地内(B棟屋根西側上部を予定)に移動する。
   ・土砂は、表層5cm分を取り、B棟屋根西側上部に移動し、その上から残りの深部の

    土砂残土を被せる。(その結果、天地返しと同等施工なる)
   ・土砂の置き場については、安全性を考慮し、B棟西側雑木林部分を整地した、より人

    が立ち入らない場所とする 。
   ・工事終了後に、 昨年度実施した防水工事範囲のA棟前庭と駐車場の間、今後実施する

    C棟裏の道路とB棟C屋根付近の間などに、 景観に配慮しつ柵等を設置する。 


 工事を目前にして、建設的な議論の場を作って頂いた教育委員会、また柔軟、且つ、適切な措置を決めていただいた区民健康村・ふるさと交流課の対応に深く感謝いたします。
 世田谷こども守る会では、今後も、「独自基準の作成」や「学校現場での情報提供のあり方」などについて、引き続き、それぞれの関係部署の方々に対応していただくようお願いをして参ります。